『白酒の節句2020』桃月庵白酒師匠にインタビュー
噺家の中でも“美声”と名高い桃月庵白酒師匠。特に、女性を演じる際の艶っぽさは必見です。美声の秘密をお聞きすると、「心当たりがあるとしたら、大声を出していた中学・高校時代の野球部の経験だけかな」と謙遜しながら答えてくれました。撮影では『くるっぱ』を抱き、少しおどけながらポーズをとってくれた白酒師匠。心なしか、ちょっと似ているような…(笑)。ここでは、表紙&巻頭インタビューを飾った「まちプラvol.24」に収まりきれなかったエピソードをご紹介します。
“噺家”という別の人格に
なれる様な気がするのも楽しい
―昨年の公演時、久留米の街は楽しめましたか?
実は、スケジュールの関係で街を散策できなくて。久留米といえば、やっぱりラーメンですよね。前回は車で移動しながら「あそこが美味しいんですよ。並んでますけど」「こっちも有名なんですよ。並んでますけど」って聞いただけ(笑)。鹿児島出身で豚骨系が好きなので、今回こそ久留米ラーメンを食べたいです。
―師匠の酒を飲むしぐさを見ると、飲みたくなると評判です。芸名に“酒”も入っていて、鹿児島出身…強そうですね。
宴席は好きなんですが、自分が飲むより見ている方が楽しいですね。私の高座を見た後は、皆さんで飲みに行っていただいて、久留米の売り上げに貢献していただければ(笑)。
―噺家になって良かったと思うことを教えてください。
いろんな人に話を聞いてもらえることでしょうか。実は、プライベートではたくさんの人に囲まれるのが苦手で、普段は家でじーっとしている時間が長いんです。ただ、ずっと一人で黙っているのはさびしいので、一日一回は繁華街に出て「あぁ、一人じゃない」って体感したり(笑)。
―確かに、こんなふうに人前で喋り続ける状況は、噺家ならでは。
何百人もの方が黙って話を聞いてくれて、御足※もいただいて、いろんなところへ行けるなんて、こんなありがたいことはありません。それに、変身願望じゃないけど、生活の中で、“噺家”という別人格のようなものになれる気がするのも楽しいですね。
※御足(おあし)=銭、お金のこと
―公演への意気込みをお願いします。
久留米は笑いの感度が良いので、落語本来のバカバカしい噺とストーリーのある噺、どちらもやります。何の知識もいりません。気兼ねなく来て、大いに笑ってください。
●Profile
1968年鹿児島県生まれ。1992年4月、早稲田大学中退後、六代目五街道雲助に入門。「はたご」と名乗る。同年6月、上野鈴本演芸場で初高座。1995年6月、二ツ目昇進し、「喜助」に改名。2005年9月、真打に昇進。「三代目桃月庵白酒」を襲名。2018年、芸術選奨文部科学大臣新人賞など数々の賞を受賞。