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ユースプログラム2024「新しい演劇鑑賞教室」(前期)①レポート

久留米シティプラザでは、若者が作品を鑑賞するための入口づくりを目指して、作品鑑賞と参加者同士の対話などを組み合わせたユースプログラム「新しい演劇鑑賞教室」を実施しています。
 

2024年5月26日(日)に開催したユースプログラム「新しい演劇鑑賞教室」前期①(イントロダクション・プレレクチャー・感想シェア会)の様子をご紹介します。

今回取り上げる「ライカムで待っとく」は、アーティストが自身の出身/居住地である沖縄について、独自の視点で捉えた問題を演劇として表現し、社会へ投げかけた作品です。公演の鑑賞を前に、個人が社会に対し、意思を持って働きかけることに焦点を当てたレクチャーを開催しました。

まずはイントロダクションから。この日は25歳以下の学生・社会人あわせて17名が参加。企画監修を務める九州大学・長津結一郎さん進行のもと、参加者は受講の理由、久留米市やシティプラザの印象などとともに自己紹介をしました。

次に、今の体調「元気いっぱい」「元気がない」や気分「緊張している」「だるい」の程度にあわせてチーム分け。プレレクチャーのテーマ「他人ごと、自分ごと」を受けて「他の人には他人ごとだけど、自分にとっては自分ごとと思っていること」について各自の想いを共有しました。

「走るのが好きで延々と走ってしまう。深夜2時に突然走りたくなって、約25キロ走ったことも…」「アイスクリームが好きだけど、子どものころから母に1日1個と言われていたので未だにそれを守ってしまう」「言葉に敏感なので‟これがいい”と”これでいい”は全く違うと思っている。LINEでも言葉を選んでしまう」など‟自分ごと”は十人十色。「広島出身なので‟広島風お好み焼き”の名称が許せない」と話す学生は、「広島がルーツだとわかるから良いのでは」という他チームからの指摘に「確かに…」と納得。熱くも短きお好み焼き論争を経て、イントロダクションが終了。参加者からは「他人ごとと自分ごとの境界線は、お互いに共通の体験がないと自分ごとにはならないのではないか」などの意見が出ました。

その後、全員移動してプレレクチャー「劇場で考える~他人(ひと)ごと、自分ごと~」に参加。一般参加者も交わり、10代から80代まで幅広い年齢層の53名が中会議室に集いました。今回のゲストは、生活圏内における課題を「自分ごと」として捉え、地域社会へ働き掛けている2組です。

1組目は、東国分校区・池の谷自治会会長の中垣忠子さん。ご子息の昭生さんとともに「久留米市戦争遺跡を(防犯上)明るいイメージに改善する事業」の活動内容と経緯などを語りました。まちづくり振興会や久留米市文化財保護課と協力し、遺跡案内板を設置したり、学習会や戦争遺跡を利用したウォーキングを実施したこと、音楽会を開催したことなどを報告。「わたしと同じように月日を重ねてきた戦争遺跡を‟うっそうとしたまま、ほっとけない”という思いから自分ごととして捉えるようになった」と活動のきっかけを振り返りました。

今もSNSでの情報発信など多岐にわたり活動を継続しており、最近では市内の学校から戦争遺跡見学のガイドを依頼されたり、テレビ局が取材に来たりするようになったとのこと。中垣さんは「人の記憶がなくなり、物がなくなると人は同じ過ちを繰り返す。そのためにも戦争遺跡が文化財として保護されるよう活動を続けていきたい」と思いを語りました。

2組目は、福岡市にある写真館『ALUBUS』を運営する写真家であり、二児の母でもある酒井咲帆さん。子ども関連の事業に関わりたいという思いから『いふくまち保育園』を設立。保育園では隣接する公園を管理しており、「畑を作ったり木を植えたり、園のイベントを公園で開催したりすることで、保護者や関係者だけでなく、地域の人と一緒に子どもたちを見守り育てていきたい」と酒井さん。まち全体を園庭として捉えており、「子どもたちの気づきを大切にし、その探求心に向き合うことで、大人たちも関わりやすい環境づくり、交流できる場所づくりを目指している」と語りました。

ゲストの話が終わると、参加者はグループに分かれて‟ゲストに質問したいこと”を協議しました。「他人ごとだと距離をとっている人たちとの付き合い方は?」という問いに、酒井さんは「同じ地域に住む人たちなので、顔見知りになるのが重要。積極的に声をかけて関わる余地を作るようにしています」と回答。また、「頑張っている人を批判する社会の風潮がある中でモチベーションを保つ秘訣は?」との問いに中垣さんは、「深く考えず、まず行動すること。失敗も糧になります」と話しました。

プレレクチャーが終わると、ユースプログラム参加者が残っての感想シェア会です。

「他人ごとだと感じていた戦争遺跡が自分の身近にあることを知り、自分ごとへと変化した。故郷について深く知ることが出来た」「時間的に離れていたり体験していないことは他人ごとと思ってしまうけど、接点をみつけて、もっと知ろうとすればいいのかなと思った」「観劇の経験はあるが、事前に視点を1つもらっておくことで、見方が変わってくると思う」など、2組のゲストに直接感想を伝えることができました。

次回はいよいよ6月15日(土)『ライカムで待っとく』を鑑賞します。

 

[講師]
中垣忠子(東国分校区 池の谷自治会 会長)
酒井咲帆(株式会社アルバス 代表、いふくまち保育園・ごしょがだに保育園 園長)

[進行]
長津結一郎(九州大学大学院芸術工学研究院准教授)
 

2024年06月14日