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事前レクチャー『務川さんに聞いてみよう!』レポート

 

2024年12月14日(土)にザ・グランドホールで開催した久留米シティプラザ ピアノシリーズ第2弾『務川慧悟 ピアノコンサート』。本番前に行った事前レクチャー『務川さんに聞いてみよう!』には県内外から約170名が参加。その様子をご紹介します。


今回のコンサートは、務川さんにとって福岡県内で行う初めてのソロリサイタル。かつ、こういった公開リハーサルも初めてとの事。ザ・グランドホールの印象を尋ねると「素晴らしいと思います。席数が1,500席もあって、こんなに響きが良いホールは日本の中でも数少ない。」と語ってくれた務川さん。司会を務める藤村育子さんの呼びかけで登場すると「今日はどうやって進めるか迷っている」と笑みを浮かべながら思案する様子、客席の期待が高まります。

「いつものリハーサルだとすべての曲を通す。大変だけど会場によってピアノの状態や響きが違って、テンポ、ニュアンス、ペダルをどこで使うかも変わるので、頭の中で考え整理しながら弾いています。今日は一部分をかいつまんで、リハーサルの時に何を考えているかお見せできたら。なるべく言葉にしながらやっていきます。」

まずは、【J.S.バッハ】のパルティータ第1番 変ロ長調 BWV 825から。
「個人的な解釈ですが、バッハの曲はそれぞれの音をクリアに届けたい。ペダルをいかに減らせるか、指先のアーティキュレーションを考えながら弾いています。家で響きが無い中で弾くと音が切れたようになってしまう。今から、あえてペダルの感覚を探りながら弾いてみようと思います。」

プレリュードを演奏後、「現代ピアノはペダルを踏むと音に丸みと濁りが生じる。バッハの時代はペダルの無い音が基本なので、ここのように響きが良いホールでは極力ペダルを踏む回数を抑えたい。また、お客様が会場に入ると音の響きが変わるので、本番でも調整しながら演奏しています。」と語りました。


続いて、務川さんの質問コーナーへ。質問は事前レクチャー申し込み時に参加者から寄せられたもので、時間の許す限り務川さんにお答えいただきました。

Q.本番は緊張しますか?
はい。めちゃくちゃ(笑)。コンクールもリサイタルも出る前はずっと緊張していますが、人生で一番緊張したのはコンクールかな。緊張は無くならないものだと悟りました。弾き始めてすぐゾーンに入る場合もあれば、約2時間のリサイタルで最後の方にやっと緊張が解ける場合もあります。

Q.尊敬しているピアニストは?
なかなか難しいな…ご存命の方だとアルフレッド・ブレンデルが好きです。ピアノの音が綺麗か否かではなくて、建設的であり哲学的に考えている。曲のメッセージによっては汚い音も使って表現している所が素敵だと思います。

Q.難しいと感じる曲は?
技術的には沢山あるのですが、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番とショパンのエチュード10-2と25-6。指を柔軟にしないと弾けない曲は難しいです。

Q.楽譜は紙派?それとも電子派?
絶対紙!画面がツルツルしているのが嫌いで、手触りの良い紙が好き。また、この楽譜を50年後も使っていたいという想いがあります。


次は、【ショパン】ポロネーズ第7番 変イ長調 「幻想」 Op.61
「幻想ポロネーズは、ショパンの中で特別共感する曲。一般的には難しいと言われていますが、あまり難しいと思ったことがなくて。思うように演奏していたらカタチになった。そういう数少ない曲です。人に見られているとやりづらいけれど、家で練習しながら響きを探っているような感じで冒頭を演奏してみます。」

「強い意志を感じる英雄ポロネーズの後に、弱さを感じるけれども幻想的な中に強さが滲む幻想ポロネーズ、2曲続けて演奏してみたいと思って。個人的にその流れがとても感動的。本番ではショパンに思いを馳せながら聴いてもらえたら嬉しい。」


ここで、再び質問コーナーへ。
Q.ピアノを練習する時のポイントはありますか?
普段の5倍遅く弾き、全部の音を耳で聴きながら弾くと良いと思います。頭の中で「ドミソ」のように音がしっかり聴こえたら次に進みます。

Q.パリと日本の違いは?
人の自由さ。良い意味でも悪い意味でも(笑)。

Q.ワインエキスパートの資格取得おめでとうございます。合格までの道のりは大変でしたか?
僕は苦労しました…。まるで受験生でしたね。今日は資格取得後初めてワインエキスパートのバッジをつけて演奏します。

最後に、【リスト】ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
「リストが唯一書いたピアノ・ソナタ。昔はよく弾いていたのですが、演奏するのは10年振りくらい。30分ある曲なので全て演奏はせず、曲について話せたらと思います。」

「この曲は単音に始まり、単音に終わる。世の中というものがやっぱり綺麗なものだけでないという不気味さを残して終わります。人によって感じ方は違うと思いますが、天国から地獄まで表現された大きなストーリーがある曲だということを意識しながら聴いていただけたら。」

務川さんによる演奏付きの丁寧な解説に、参加者は終始聴き入っていました。美しい音色に感極まったのか目に涙を浮かべる方も。本番の演奏が更に楽しみになっていただけたようです。


★来場者の感想を一部ご紹介します。

・プロのピアニストがどのように曲をとらえ完成させていくか知ることが出来ました。務川さんの人柄も伝わる楽しい時間をありがとうございました!!

・幻想ポロネーズの魂の慟哭のような音に泣かされました。事前レクチャーを聞いたことで、より深く音楽を聴くことが出来た気がします。

・「素晴らしい!」の一言です。音楽と人生を深ーく探求されている姿に感動しました。

・ピアノの技術、響きによって弾き方を変える、曲の解説など詳しく聞くことができてとても興味深かったです。事前レクチャーで務川さんの考えを知ったので、その部分も意識しながら聴くことが出来ました。おかげで他のコンサートよりも楽しめましたし、務川さんのメッセージにも触れられた気がします。



コンサート終演後の務川さん。左胸にはワインエキスパートのバッジがキラリ。


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2025年01月14日