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「久留米で出会う狂言の会」野村萬斎・裕基親子にインタビュー

9月24日(日)に開催する「野村万作・萬斎・裕基 久留米で出会う狂言の会」。ザ・グランドホールの舞台上に能舞台を組むという、久留米シティプラザ初の試みです。出演は、野村万作・萬斎・裕基の三代を中心とする「万作の会」。演目は、初心者にも楽しめる狂言「佐渡狐」「二人袴」に加え、2021年に久留米市芸術奨励賞を受賞した田中とおるさんが囃子方で登場する一調「貝尽し」、素囃子「獅子」が揃いました。公演に先立ち、野村萬斎さんと裕基さんにお話を聞くことができましたのでご紹介します。
※ご好評につき、前売券の販売予定枚数は終了しました。
※当日券は全席種(バルコニー席含む)あり。9月24日 14:00からザ・グランドホール前で販売します。

 
萬斎さんは2021年3月の演劇公演『子午線の祀り』以来の久留米です。当時、ホールの残響を気にされて念入りに台詞のチェックをしている出演者がいらっしゃいましたね。
 

〈萬斎〉ザ・グランドホールはとても音響の良い劇場です。残響が多い(長い)中、大勢で話したり群読すると言葉が重なりすぎてしまうので、少しゆっくり話すのがコツ。狂言は小さいファミリーでやっていますから、どのような環境でも対応できます。

 
裕基さんは幼いころから舞台に立っていらっしゃいますが、身長は既にお父様を追い越して、声もそっくりになってきました。大学卒業後、心境の変化はありましたか?
 

〈裕基〉変声期で苦労した時期もありましたが、最近は声が安定して父に似ていると言われることが増えました。周囲が就職活動をする中、改めて私も志を固めたのですが、社会人になり本腰を入れて狂言と向き合うことで決意できたこともあると思います。

 
萬斎さんは以前から狂言の普及啓発に取り組まれていますが、狂言が親しまれるために日頃から考えていることはありますか。
 

〈萬斎〉狂言は、役者の発する声と肉体、衣装があればどこででもできる素手の芸(トランクシアター)とも言えます。演目によっては2~3人で足るほどシンプルなので、機動力を活かして皆さんにご覧いただく機会が増えればと思っています。

 
裕基さんは、同世代の皆さんに向けてどんなアプローチを考えていらっしゃいますか。
 

〈裕基〉言語や文化の違う多様な人々と触れ合う機会が多い現代で、自分の国の伝統芸能がどのようなものかを説明できるようになっていただけたら嬉しいです。今回は親子三代の共演ということで、90代の祖父から20代の私まで世代を超えて伝統芸能が継承されているということも知っていただけると思います。

 

 
本公演のみどころは?
 

〈萬斎〉『二人袴』は、婿とその父親が嫁の実家に招かれる話です。二人で舅に挨拶したいんだけど袴は一つ。現代に置き換えると、スーツを着なきゃいけない場面でジャケットが一枚しかなくて、とっかえひっかえ交互に出ていくイメージですね。最後はバレてしまうんだけど、皆が温かく受け入れるというめでたい笑いです。慣れない儀式の中で初々しい作法だったり失言だったりが微笑ましくて、現代でも「あるある」と共感していただけるような定番の演目を、今回は「三段之舞」という小書(特殊演出)でお囃子方が賑々しく盛り上げてくれます。

 
久留米在住の田中達さんも太鼓方で共演します。
 

〈萬斎〉田中さんは国立能楽堂の能楽研修の出身で東京にいたころからの縁。彼の地元で共演できるのはとても嬉しいです。一調「貝尽し」は彼の師匠・故 観世かんぜ元伯もとのりさんと私が作った作品で、田中さんの太鼓と私の謡だけという演奏形式です。竜宮城で貝の精と酒盛りをしている謡で曲もカッコいいので、観て聴いて楽しんでいただければと思います。

 

 
本公演では3階に学生・学生同伴席を設けました。教科書でしか狂言を知らない子どもたちや初めて狂言を観る方は、どんなところに注目して鑑賞したらよいでしょうか。
 

〈裕基〉若い方には「伝統芸能=難しい」と思われがちですが、狂言では日本語の耳心地の良さや抑揚の美しさを感じることができると思います。難しい言葉も出てきますが、今回は日々人間が生きている喜びを感じられるような、わかりやすい演目を揃えました。高いところからでも後ろの席からでも、どの角度から見ても面白いと思います。

 

〈萬斎〉わからないことはいけないことのように思われがちですけど、狂言はシチュエーションコメディなので、教科書のように一字一句をわかろうとする必要はありません。少し聞いて耳が慣れれば楽しんでいただけると思います。我々の息遣いとお客様の息遣いが一緒になることでライブの良さが出るので、ご自身も参加するつもりでご覧いただきたい。狂言は700年近い歴史がありますが、当時も今も人間はさほど変わらないということを感じていただけるのでは。普遍的な価値観と洗練された笑いをぜひ体感してください。

 

野村 萬斎(のむら まんさい)

1966年生。祖父・故六世野村万蔵及び父・野村万作に師事。重要無形文化財総合指定者。東京芸術大学音楽学部邦楽科卒業。「狂言ござる乃座」主宰。国内外で多数の狂言・能公演に参加、普及に貢献する一方、現代劇や映画・テレビドラマの主演、「能 狂言『鬼滅の刃』」『ハムレット』等の古典の技法を駆使した舞台作品の演出ほか幅広く活躍。1994年、文化庁芸術家在外研修制度により渡英。現代に生きる狂言師として、あらゆる活動を通し狂言の在り方を問うている。
 

野村 裕基(のむら ゆうき)

1999年生。野村萬斎の長男。祖父野村万作及び父に師事。慶應義塾大学法学部卒業。能楽協会会員。2003年、3歳の時に『靭猿』で初舞台を踏み、その後も子方として国内外で多数の舞台に出演。修業を続け、『三番叟』『奈須与市語』、2022年10月に『釣狐』を披く。2023年3月、初めての現代劇出演となる舞台『ハムレット』(野村萬斎演出・世田谷パブリックシアター)ではタイトルロールのハムレット役を務めた。
 
 

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「久留米で出会う狂言の会」野村萬斎・裕基親子にインタビュー

2023年09月07日