『みみばしる』インタビュー【前編】松居大悟、本仮屋ユイカ、石崎ひゅーい「同世代三人の結束」
ラジオ局が作る舞台だからこそできること。番組※を稽古場にして進捗を公開し、リスナーにアイデアを募って出演も呼びかける…そんな前代未聞の作品作りにチャレンジしているのが、脚本家・演出家・映画監督で俳優でもある松居大悟です。彼の作る“新しい表現”に賛同し音楽監督を務めるのが、シンガーソングライターで俳優としても松居監督の映画に出演経験がある石崎ひゅーい。そして主演は、二人が「雲の上の人」と感じつつ無理を承知でオファーした女優・本仮屋ユイカ。J-WAVE開局30周年プロジェクト、ラジオ局と同世代の三人がリスナーと一緒に作り上げる「みみばしる」とは、どんな舞台なのでしょう。インタビュー前編では、広報紙「まちプラvol.20」の表紙を飾った三人の、仲の良さが窺える裏話をお届けします。
※「JUMP OVER」福岡はCROSS FMで毎週日曜日23:00~放送中
[前編] 同世代三人の結束
―ラジオと演劇、そして受信者と発信者の境界線を越えるという新たな試みがスタートしましたが、制作の様子を教えてください。
本仮屋:型が決まっていないからこそ、それぞれが「こうやりたい!」というものを楽しんで作っていて、熱い現場です。リスナーから届いたエピソードやアイデアを、ちょっと形を変えながら本に加えたり、「この台詞はあいつに言わせたいな」とか番組で話したり。そんな風に思い描きながら台詞を考えてくれることが、役者としてはすごく嬉しい。一人ずつぴったりな言葉がはまっていくと思います。
石崎:音楽は、シンガーソングライターの時とは違う新しい作り方。松居君から全体のプロットを聞いた上で、一つのシーンに対して「こんなメロディどう?」ってキャッチボールしながら作っていて、試行錯誤しているけど楽しいです。
松居:迷っているところも曲を聴くことで「あ、こうすればいいんだ」って話が進んだりね。あらかじめ固めすぎると発注するだけになっちゃうし、それだと主題歌をオファーするのと変わらない。見たことのない作り方でワクワクします。
―みなさんにとってラジオとは?
石崎:デビューしてラジオで自分の音楽がバンバン流れているのを聞いた時、「魔法みたいだな」って不思議な気持ちになりました。流れていく儚さというか、舞台も同じで、その時だけのやりなおしがきかないもの、という共通した魅力があると思います。
本仮屋:ラジオは番組はもちろん、CMも面白いんですよ。ラジオショッピングは、音だけなのについ電話しそうになっちゃう。それだけ耳の力ってすごいし、想像が膨らむのも楽しいです。
松居:受験の時に勉強から逃げるように聞いていたので、何か悪いことをしているような気がして(笑)。イヤホンだったら集中して勉強しているように見えるでしょ?だから、不健康で面白いものっていうイメージですね。
―同世代で仲が良さそうですが、お互いのリスペクトは?
松居:ひゅーいは、僕が通り過ぎちゃうような感覚を言葉にするのが素敵で憧れます。ユイカさんは、言葉選びと瞬発力に加えて、誰も切り捨てない言葉を発することができる。年下だけど、とてつもなく“座長感”があるよね。
石崎:伝えるのがうまいし、顔合せの時もよくまとめてくれます。僕が突飛な歌を作って投げても受け止めてくれそう。
本仮屋:二人は私が「こういう風にしたい」ってことを良い意味で壊してくれます。ひゅーいさんは歌も話す言葉も原石みたい。余計なものがなくて、素のキラキラしたキレイな言葉を紡いでくる。松居さんは、人の本質や弱かったり隠しておきたい部分を見つけるのがすごく上手だし、それを表現するのも上手。普段からすごく観察されているような気がするので、刺激を受けます。
石崎:松居君は身体を張って作品を作るタイプなので、ご一緒できるのは光栄です。初めて出演した映画が松居監督だったんですが、自分で作ったものと自分で戦いながらボロボロになって、それにみんなが感化されていくという現場でした。持ち味の“こじらせてる”成分は大好きですし、作品にも出ています。
松居:いえ、僕はまっすぐです(笑)。
―松居さんが学生時代を過ごした久留米での公演が決まりました。
松居:久留米は、同級生も知り合いも多いんですよ。
本仮屋:久留米に上陸したら、キャラ変えて先輩ぶるんですか?(笑)
松居:そうなりたい!「メシ行こや」とか(笑)。
本仮屋:福岡の人はみんな肌がキレイですよね。以前撮影で行ったんですけど、女性だけじゃなくてオジ様世代も肌がつるっつる!楽しくて観察していました。
石崎:僕が好きになるアーティストや表現者は、福岡出身の人が多いんですよ。福岡の人の気質が好きで、人間性も合う気がするので、僕の音楽は福岡の方に受け入れてもらいやすいと思います(笑)。
本仮屋:先頭を走っている松居さんの思い入れのある場所で公演ができるというのは、キャストとしても幸せなこと。ファンの方も温かい眼で見てくれたり、ホーム感がある中での公演になると思うので楽しみです。
●Profile
松居大悟:1985年福岡県出身。久留米大学附設中高卒。劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出を手掛ける。2012年「アフロ田中」で長編映画初監督。2018年「君が君で君だ」、ドラマ「バイプレイヤーズ」など枠に捉われない作風は国内外で評価が高い。
本仮屋ユイカ:1987年東京都出身。2001年にドラマ「3年B組金八先生第6シリーズ」で女優デビュー。2005年NHK連続テレビ小説「ファイト」主演、バラエティ番組「王様のブランチ」のMCを3年半務めるなど多方面で活躍中。
石崎ひゅーい:1984年茨城県出身。2015年「第三惑星交響曲」でデビュー。2016年「アズミ・ハルコは行方不明」で映画初出演。昨年には初のベストアルバム「Huwei Best」を発表。感情のままに歌う規格外なシンガーソングライター。