『ベター・ハーフ』片桐 仁さんインタビュー【後編】
「天国で一つだった魂は、この世に生まれる時に男性と女性に分けられて生まれてくる。だから、現世で天国時代のもう片方の自分に出会うと、身も心もぴたりと相性が合うといわれる。その相方をベターハーフと呼ぶ。」この、なんともロマンティックなタイトルの舞台に出演するのが、テレビや舞台など多方面で活躍する片桐 仁さん。初演からわずか2年での再演となった舞台『ベター・ハーフ』の稽古の様子や意気込みなど、前編・後編の2回に渡ってお届けします。
●バックナンバー
↑片桐仁 不条理アート粘土作品展「ギリ展」で来福
後編 浮き彫りにされた恋愛観
●風間俊介さん、中村 中さんは前回に引き続いての共演、松井玲奈さんはニューフェイスです。
玲奈ちゃんは初演を観てないからすごく新鮮で、ちゃんと感情で動いてくれるので助かってます。とにかく台本がいいので、奇をてらわず一番いい表現をしたいねって話してて、みんなで「こうじゃない」とかディスカッションしてると、恋愛観を浮き彫りにされますね。
●どんなふうに浮き彫りにされたんですか?
俺は本当に恋愛経験ないなって。風間とか中ちゃんとかはね、恋が好きなんですよ。僕だったら、私だったらってどんどん話してて。僕は黙っちゃうんですね。で、玲奈ちゃんも意外と黙ってて、「あれ?玲奈ちゃんこっち側?」って (笑) 。ま、まだ若いですからね。中ちゃんは感受性が強いから、新たに自分で感じる所から始めて組み立て直してる。本読みしながら正しい反応してるから、風間と二人で「ヤベエな」って。だから恋愛に関する感受性のアンテナを、毎日しっかり張ってなきゃいけないなって。
●片桐さんのセリフで一番印象的な言葉を教えてください。
(台本を出してめくりながら)僕が演じる沖村は、いいこと言おうとして、まあまあスベるんですよね。恋に憧れてますから。そうだな、「愛されないのは慣れてるから。僕が一方的に愛するから」ってセリフ、これは言うのがしんどかった。その場で「こう言おう」として言ったんじゃなく、こう言ってしまった。セリフにすることによって身につまされるというか、自分の口から出た言葉によって自分が影響を受けるんですよ。言いながら自分がちゃんと傷つかなきゃいけない。テンポでお客さんをグイグイ引っ張っていかないといけないから。
●台本もすごい厚さですね。
セリフが多いんですよ。会話のテンポが無茶苦茶速くて、初演のDVD 観て「こんなに早く話してたんだ」って。まだこんなテンポでできないですもん。セリフの記憶に関してはちょっと楽だけど、型として染み付いちゃった段取りに持ってかれないようにしないと。今回はツアーの数も増えたし、毎回これを新鮮に演じるのがどんどん難しくなっていくと思う。
●片桐さんにとっての「ベター・ハーフ」(自分の魂の片割れ)とは?
なんだろう、わかんないなぁ…。僕は割と人と関わることを避けてきたし、恋愛に関しても自分では関係ないと思ってた。だから、恋に積極的な沖村になった時に、沖村と同じくらい好きになって、好きになってほしいって思ってるんだろうな。お互い認め合ってこそのベター・ハーフですよね。 20 代の頃に恋愛をしてこなかったことに後悔があるから、そういうものをぶつけてるのかもしれない。沖村は自分の思いのたけをバンバン言うヤツで、妙に純だから鬱陶しいんだけど、それが面白いからどう伝えようかなってね。恋愛する役ってほとんどこないんで (笑)。
●7月の「ベター・ハーフ」に続き、11月にも公演が控えていますが、久留米を訪れたことはありますか?
ないんです。久留米出身の芸能人が多いのと、ラーメンの印象があるかな。九州大好きだし福岡も大好きなんで、美味いもん食べて楽しみたいね。劇場のキャパは 300(席) ?最高!すごく一体感が出るんですよ。それくらいのキャパだと、お客さんも他人事ではいられないんです。さっきまで笑ってたのに、数秒後に凍りつくとかね。飴をカチャカチャ食べたりできないと思いますよ (笑)。ホント面白いんで、演劇を観た事がない人にもぜひ観てほしいです。
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片桐 仁[かたぎり じん]
1973年11月27日生まれ。埼玉県出身。舞台でコント作品を発表する男性ふたり組「らーめんず」のひとり。長髪でメガネの風貌が印象的な怪優。最近の主な出演作は、舞台「サバイバーズ・ギルト&シェイム」「No.9〜不滅の旋律」(いずれも鴻上尚史演出)、ドラマ「グラメ!〜総理の料理番〜」(テレビ朝日)他、映画やバラエティ番組、ラジオなど多数。また、雑誌連載や個展「不条理アート粘土作品展『ギリ展』も開催するなど、多方面で活躍中。