「鼓童」三浦友恵さんインタビュー(2)
ピンと伸びた背中にしなやかな体躯、光の加減で栗色にも見える瞳はイキイキ輝いて、朗らかな笑顔に自然と引き寄せられてしまいます。佐渡島を拠点とする太鼓芸能集団「鼓童」の三浦友恵さん。準メンバー時代から海外公演に抜擢され、2016年に正式メンバーとなった期待の若手が、7月26日(水)の久留米公演を控えた今月、伝統芸能を通じた交流のため久留米市を訪問。思いがけず、お話を聞くことが出来ました。毎週1回、計3回に渡ってインタビューをお届けします。
●バックナンバー
↑九州大谷短期大学で講義中
第2幕 苦い冬 ~過酷な研修時代
●『鼓童』に入るのは難関だとうかがいました。
私の時は、まず3種類の作文による書類選考がありました。それから面接や実技試験。合格すると、2年間の研修生活です。これがもう、本当に辛くて…二度と戻りたくないですね。
●どんなふうに大変だったんですか?
朝は5時起床で走り込みからスタートします。研修所が山の中にあるので冬は道が凍るんですよ。研修所生活は、携帯はもちろんテレビもお酒も恋愛も禁止で、島から出られるのは正月だけ。北国なのに冷暖房まで禁止!冬は洗濯物もペットボトルもカチカチに凍るので、マスクして帽子かぶって毛布3枚にくるまって眠ってました。よく病気しなかったな(笑)。姿勢や食べ方も厳しく指導されたし、左右のバランスを保つために箸は利き手と逆の手で食べないといけないし、掃除も雑巾がけ。夏はムカデやスズメバチに刺された人もいました。
↑自ら木を削って作ったバチ
●そんな大変な生活の中で、太鼓も習得されたんですね。
それが、まず最初に「これまでの太鼓の技術は全て捨ててください」と言われました。鼓童に入るからには、鼓童の打ち方を身につけなければならない。それができなければ、帰るしかないんですね。その時、「あぁ、鼓童に来たんだな」って実感しました。木を削って太鼓のバチを作ることから始まって、笛や琴、茶道に能、踊りや歌など様々な日本の伝統芸能も学びました。それと、農作業や畑仕事も。
●太鼓に関係ないように思えますが…
研修所生活は基本的に自給自足に限りなく近い仕組みで成り立っています。米や野菜は育てるし、魚も自分でさばきます。一度「イカを余す所なく調理する」って課題もあって、料理の味や見た目も指摘されました。でも、それも工夫したり魅せ方を考えたり、表現につながるんですね。鼓童は日本各地の伝統芸能を舞台に上げている一面もあるのですが、伝統芸能ってどれも重心を下に置くのが基本で、姿勢がすごくきついんです。でも、それは日本人が農耕民族で足腰が鍛えられているから。歌も踊りも日々の生活に直結していて、農作業が原点なんだということを身をもって体感できました。
↑講義では踊りも披露しました
●2年間の寮生活で仲間との絆も深まったのでは?
コミュニケーション手段が話すことに限定されるので、最初は「人間と人間がぶつかるってこういうことか」って思いましたね。でも、ずっと接していると徐々にお互い“一線”がわかってくるし、限られた環境の中で「いかに楽しむか」って一体感も出てくる。特に誕生日は一大イベントだったので、ケーキを作ったりパイ投げならぬケーキ投げをしたり…。お菓子など甘いものは普段食べれないので、ぐちゃぐちゃになったケーキも最後はみんなの口に入ります(笑)。こうして同期とバカやってる時は本当に楽しかったです。
●その絆、舞台にも活かせそうですね。
鼓童ってみんな真剣に太鼓と向き合ってるんです。気づけば太鼓のことを考えているし、太鼓の話ばかりしてる。じゃあ、どこにそんな魅力があるんだろうって考えた時に、“間”なのかなって。私たちの舞台には指揮者がいないので、阿吽の呼吸が大事。そういう意味では、同期とはすごく呼吸が合いますよ。
第3幕 若い夏 ~久留米公演へ向けて は
7月6日(木)に更新予定です。お楽しみに!
【三浦 友恵(みうら ともえ)】
5歳より太鼓を始める。2013年研修所へ入所。2016年より正式メンバー。舞台では主に太鼓、踊りを担当。2015年、準メンバーながら「神秘」アメリカツアーメンバーに抜擢、その後「交流公演」「佐渡特別公演」、インドネシア・バリでの公演などに参加。2016年「神秘」ヨーロッパツアー、「螺旋」「交流公演」で国内各地を巡り、「若い夏」では演目「灯篭」で情感あふれる踊りを披露した。
★鼓童「若い夏」日本ツアー
■開催日時
2017年7月26日(水)18:30開演
■料金
全席指定(税込み)
・S席(1-2階):6,000円
・A席(3階):5,000円
・B席(4階):4,000円
・学生:2,500円(当日座席指定・要学生証)
■公演に関するその他の詳細は、こちらから
http://kurumecityplaza.jp/events/299