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『ベター・ハーフ』片桐 仁さんインタビュー【前編】

「天国で一つだった魂は、この世に生まれる時に男性と女性に分けられて生まれてくる。だから、現世で天国時代のもう片方の自分に出会うと、身も心もぴたりと相性が合うといわれる。その相方をベターハーフと呼ぶ。」この、なんともロマンティックなタイトルの舞台に出演するのが、テレビや舞台など多方面で活躍する片桐 仁さん。初演からわずか2年での再演となった舞台『ベター・ハーフ』の稽古の様子や意気込みなど、前編・後編の2回に渡ってお届けします。

↑片桐仁 不条理アート粘土作品展「ギリ展」で来福

 

 前編   初顔合わせの日に確信した再演 

 

●初演から2年、早くも再演が決定しました。

初演の時に本読みをした瞬間、再演を確信しました。当時は初めて鴻上さん(作・演出) の舞台に出させていただくってことでプレッシャーがあったんですけど、これほどガチガチの恋愛だけの演劇って他にないと思います。だって、自分の代わりにイケメンの部下をデートに行かせるって、このベタ過ぎる展開。そしたら相手も身代わりを送ってきてるって、そんなトレンディな (笑)。こんなに軽く始まるのに、実は女性二人の役柄が結構衝撃的で。でも、これはあくまでもさわりですから。見事ですよね。何で賞とかもらえなかったんだろう。

●再演決定だな、と確信した一番の理由は?

わかりやすく始まるのに、思いもしない話になって二転三転、四転五転…どんどんどんどん話が進んでいく中で、きっとお客様もどこかで自分の恋愛経験とリンクすると思います。恋愛したことない人ってそういないでしょ?どの役でもいいし、1つのセリフだったり、ちょっとした関係とかにも感情移入しちゃう。僕も実際そうだったから。「なにこれ?」って身につまされるというかね。

●誰もが思い当たる節がある?

 告白しないまでも、片思いくらいはしたことあるでしょ?正直、僕も恋愛には奥手だったし、好きじゃなかった。恋愛って、どうしても好きになっちゃうでしょ。で、なんで好きになってくれないんだろうって構造が、 4人の間で時間の流れとともに何往復もするんですよ。恋愛というエッセンスをここまで濃く搾り出している作品は観たことがないです。

↑ベター・ハーフのポーズ?

●2年という短いサイクルでの再演ですが、稽古は順調ですか?

それが意外と覚えてなくてね(笑) 。稽古したら甦って来るんだけど、思い出すのは段取りばかり。本来は、気持ちがあっての動きで、段取りって後からついてくるものなのにね。鴻上さんからも「深度が増すはずだから、テンポを変えずに理解してほしい。再演だから余裕を持ってできるでしょ」って言われたけど、そんなことない。 3年半の話を2時間弱で4人だけで演じるので、1個1個のセリフを丁寧にしなきゃいけないし、それを言うだけの理由があるとか、相手のセリフから受ける衝撃だったりとか、気持ちの動きっていうのを大切に演じなきゃいけないなって。当たり前のことなんだけど、再演と高をくくってました。

●台本を改めて読み直して感じたことは?

 初演の時は夢中で、セリフも言った記憶はあるけど何にも考えてなかったなって。今回は「自分の中から出てきたセリフにしてほしい。納得できるまでディスカッションして」って言われてるんで、アプローチとしては“自分のこととしてやる”ってことを一からやってます。言いにくいセリフや感情がつながらないセリフは、 1個1個みんなでディスカッションしてね。セリフの重みを実感してます。(後編へ続く)

 

後編「浮き彫りにされた恋愛観」は7月17日(月)に更新予定です。お楽しみに!

●公演情報の詳細はこちらから!

 

片桐 仁[かたぎり じん]

1973年11月27日生まれ。埼玉県出身。舞台でコント作品を発表する男性ふたり組「らーめんず」のひとり。長髪でメガネの風貌が印象的な怪優。最近の主な出演作は、舞台「サバイバーズ・ギルト&シェイム」「No.9〜不滅の旋律」(いずれも鴻上尚史演出)、ドラマ「グラメ!〜総理の料理番〜」(テレビ朝日)他、映画やバラエティ番組、ラジオなど多数。また、雑誌連載や個展「不条理アート粘土作品展『ギリ展』も開催するなど、多方面で活躍中。

2017年07月10日