音楽劇『ライムライト』石丸幹二さんにインタビュー【前編】「チャップリンが伝えたかったこと」
偉大な映画監督であり映画作家、そして演者でもあるチャールズ・チャップリン晩年の傑作映画『ライムライト』。ライムライトとは昔の舞台照明のことで、“名声”の代名詞。かつて一世を風靡した主人公の老芸人カルヴェロに、「チャップリン自身の姿を映しているのでは」と分析するのは、同役を演じる石丸幹二です。世界初舞台化に挑んだ4年前、途方もない重圧を乗り越えて喝采を浴びた彼が、新たなキャストと共に再び臨む本作。ここでは広報紙「まちプラvol.21」に収まり切れなかったインタビューを、前編・後編に分けてお届けします。
◎広報紙「まちプラvol.21」(インタビューはP3)はこちら!
【前編】チャップリンが伝えたかったこと
−4年ぶりにカルヴェロを演じる上で、新たに発見したことはありますか?
チャップリンはあまりにも偉大な方。到底及びませんが、彼の心の中を更に深く読み込んで、伝えたかったことを表現していきたい。例えば、カルヴェロは様々な言葉を発しているけれど、それはチャップリン自身の本音もあるんじゃないかなって思うんですね。だから一つの言葉も漏らさずに、「なぜこの言葉を生み出したんだろう?」ということを探って、きっちり裏付けを作って発していくべきだなと。私は彼のように波乱な人生を歩んでいないので、映画や映像を観たり、文献などを調べたりしながら、答えを見出しているところです。
−実年齢より高齢のカルヴェロを演じますが、共感する部分は?
カルヴェロに比べれば若いですが、俳優という生き方では重なります。30年もやっていると、年齢的なことだったり時代のニーズに合わなかったり、若い俳優には敵わないことも増えてくる。やはり肉体は正直ですから。でも、後に芽吹いてくるスターの卵たちに光を当て、見えないバトンを次世代へ渡していく。そこに共感します。
−もどかしさは感じませんか?
後ろを見ればもどかしさですが、前を見れば次に出来ることがいっぱいあります。俳優として、次にやらなければならないことと常に向き合って行くので。
−本作には名曲、名言がたくさんありますが、1つ挙げるとすると?
『テリーのテーマ(エターナリー)』かな。聴くと皆が「この曲ね」って思うほど浸透している曲ですが、舞台版では歌詞がついて、若者に対する送り出しのようなメッセージが入っています。自分が落ちぶれていることは自覚しているけど、「テリーをスターにしたい」という思いと悔しさみたいなものも織り交ぜられていて。メロディーラインも素敵ですし、音楽としてもすごいなと思います。
●Profile
1965年愛媛県出身。幼少の頃からピアノなどの楽器に触れる。東京音楽大学音楽学部器楽科にてサックスを専攻、3年時に中退。1987年、東京藝術大学音楽学部声楽科に入学。1990年、劇団四季「オペラ座の怪人」でデビュー。以後、数多くの作品に出演し、2007年劇団四季退団。現在は映画・ドラマ・音楽など、活躍の場を広げている。