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ミュージカル「シークレット・ガーデン」の石井一孝さんにインタビュー【前編】

1900年代初頭は日本で言えば明治時代、

あの時代の忍耐強さが切ない。

 ミュージカル俳優として数々の話題作に出演する一方、シンガー・ソングライターとしての顔も併せ持つ石井一孝さん。ディズニーアニメ「アラジン」のアラジン役(歌)と言えば、あの甘く伸びやかな歌声を思い出す方もいるのではないでしょうか。彼が今回ミュージカル「シークレット・ガーデン」で演じるのは、兄嫁を深く愛してしまった弟の役。兄嫁亡き後も、妻の死を克服できない兄と病弱な甥を、家族として、そして医師として側で支え続けます。様々な葛藤を胸に秘めた難しい役どころをどう演じるのか、久留米公演を前に直撃取材しました。役作りや作品の見どころはもちろん、なんと恋愛アドバイスまで!? 前編・後編の2回に渡ってたっぷりとお届けします。

 

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【前編】

兄嫁を愛してしまった弟…忍ぶ恋の行方は?

Q.いよいよ日本初演版が東京で開幕しました。実際にお客様の前で演じた感想は?また、お客様の反応は?

 すすり泣いている方が多いですね。胸を打つストーリーがお客様に届いているんだな、と嬉しく思っています。俳優デビューして26年。色々な役を演じてきましたが、この作品では、役者の想像を超える反応を頂くことが多いんです。思ってもみなかったことが見えてくるというか、「芝居とは生ものだ」と改めて日々実感しています。

 

Q.開幕前は、石井さん演じるネヴィルが、兄・アーチボルド役の石丸幹二さんと兄弟に見えるかどうかを気にしていらっしゃいましたが()、兄嫁のリリーを愛していたネヴィルにとっては、兄は恋敵でもあるのではないでしょうか。また、リリー亡き後も彼女を忘れられないという、いわば似たもの同士でもありますよね。

  『リリーズ・アイズ』という、石丸さん演じるアーチボルドとのデュエットが大きな見せ場なんですが、壮大なバラードで、毎回リリーへの想いをそれぞれが赤裸々に吐露しています。「命をかけてリリーを愛した」とまで歌う兄弟。熱いです()。ある種の嫉妬心やリリーを手に入れられなかった悔しさは抱えていたと思いますが、だからといって、兄に対して恋敵的な敵対心を抱いていたとは思いません。1906年という設定なので、兄と弟の立場・権利が今とは大きく違うからです。弟は、色々な点で次男である自分をわきまえなければならないと考えています。そもそも、気付いた時には兄のフィアンセだった人だと思っています。むしろリリー亡き後、精神的に病んでしまった兄を「自分が支えなければ」と介護の立場で常々心を痛めるというのがネヴィルです。

Q.ネヴィルにとって、兄はどのような存在なのでしょう。また、ネヴィルに共感できる部分はありますか?

 兄はかけがえのない家族であり、唯一無二の存在なんです。僕がネヴィルに共感する部分にも繋がるのですが、自分の人生を犠牲にしてでも兄と甥の治療にあたるというのが、切なくも現実的ですよね。仮に、家族が健康を損なったり精神的に病んでしまったら…僕自身の身に起きても、同じように支えていくと思います。ネヴィルは医師という設定ですし。

 

Q.では、ネヴィルにとってリリーとは?

 リリーのことは、まず兄のフィアンセとして紹介され、庭でガーデンパーティをしたり一緒に食事をしたりして過ごしたのだと思っています。背中にコブがあることで小さい頃から塞ぎがちな兄を、支え笑わせ、明るい光を灯したリリーに、尊敬心を抱いたのではないかな。婚約期間の数ヶ月、コリンを産むまでの1年。最低でも1年半くらいはミッセルスウェイト邸(我々のお屋敷)で共に生活していたはずです。その中でリリーの思慮深い人柄、誰に対しても平等に接する優しさ、その透き通るような美しさやたおやかさに、いつしか抱えきれない想いを募らせていった…というような裏ストーリーを作っています。決して好きになってはいけない女性への秘めた想いに胸を焦がしながら、立場や理性を重んじて、告白することもせずに生涯を貫き通したんだと思います。リリーにはもちろん、兄にも決して悟られることなく…。日本で言えば明治時代の作品ですから、あの時代の忍耐強さが大きな空気となって切ないですよね。まさしく、忍ぶ恋。無上の愛ですね。

 

【後編】報われない想いにアドバイス

 

■プロフィール 石井一孝(いしいかずたか) 

1968年1月23日生まれ。東京都葛飾区出身。15,000人を超える応募者の中からオーディションに合格し、1992年5月ミュージカル「ミス・サイゴン」でデビュー。その後「レ・ミゼラブル」マリウス役ジャン・バルジャン役など舞台を中心に活躍。2010年「マイ・フェア・レディ」、「蜘蛛女のキス」で第35回菊田一夫演劇賞を受賞。近年の主な舞台出演作品に「シスター・アクト~天使にラブソングを~」、「デス・ノートThe Musical」、「スカーレット・ピンパーネル」などがある。ディズニーアニメ「アラジン」でアラジン役(歌)を担当。舞台活動と並行しシンガー・ソングライターとして積極的に音楽活動を展開しており、オリジナルアルバム6枚をリリース。アルバムの中からミュージカル曲を厳選し、山崎育三郎、岡幸二郎ら豪華ゲストを迎えた新曲4曲を加えたミュージカルベスト盤を2018年4月「Treasures in My Life 1.5~Best of Musical Songs~」をリリース。洋楽全般に精通し、特に70年代から80年代洋楽に造詣が深い。LP/ CD 35,000枚所有のコレクターとしても有名。在阪FM局で音楽番組を担当している。

●石井一孝オフィシャルサイト

2018年07月06日